小唄徒然草 27

今回の配信で若かりし頃の春日とよ家元の小唄シリーズは、すべて古曲で作者不詳です。
どうぞお聴きください。

十五、心でとめて(三下り)

 
心で留めて 帰す夜は 可愛い
お方の ためにも なろと 泣いて
別れて また 御見もじ
猪牙の蒲団も 夜露に濡れて
あとは物憂き 独り寝するも
ここが苦界の ま中かいな

解説

好きな男を心の中では、引き留めながら、浮世の義理で返さなくてはならない、遊女の心情を
唄った小唄、吉原から朝帰り、お客は猪牙舟(ちょっきぶね)で、蔵前の首尾の松まで、帰るのであるが、その舟の中の夜露に濡れた布団一枚にくるまって、寂しく帰ってゆく男の姿を想像して涙している遊女

・ままならぬ(三下り)

儘ならぬ 浮世と 知れど 逢いたさに
首(よう)ありげなる 玉章は 
こころ 赤間の 小硯(すずり)に 受けて
欲しさよ 荻(はぎ)の露

解説

硯(すずり)の石、産地で有名な山口県出身の勤王の志士が、古郷に残した女性を思う気持ちを唄った小唄、山口県長州藩には松下村塾があり、若者は、対幕府のため、京へ行ったり、薩摩に走ったりというのが「儘ならぬ 浮世」であり、赤間石の硯で書いた手紙を送るから、自分の気持ちを受け止めて欲しいという、気持ちを唄った小唄、長州は、萩も女性も美しい

十六、向う通るは(三下り)

 
向う通るは もしや 
あの人じゃ あるまいか
いいえ いいえ 違ごうた 
渋蛇の目 相合傘で
しっぽりと あれ 春雨が 
降るわいな 濡れかかるえー
さりとは 気短かな
ちょっと 逢うても 行かしゃんせ

解説

文献を調べたのですが、わかりませんでした。

木枯し(三下り)

木枯の 吹く夜は 物を思うかな
涙の露の 菊重 かさぬるよりも
一人寝の ふけて 寝ぬ身を
やるせなや

解説

木枯らし吹く寒い夜、意中の人を待っていたが、とうとう来なかったので、一人寝る淋しさを唄った小唄、菊重ねとは、
上が白、中が薄紫と少し濃い紫、下が緑ともいう。 秋に着用する装束。