小唄徒然草40

今まで公開した小唄徒然草を表でまとめています。貴重な音源や動画でご紹介しています。

今回は、小唄「住吉」を掘り下げます。

★小唄「住吉(すみよし)」解説

曲中に縁起物の“松”が使われており、最後は“寿”で締めるおめでたい内容の小唄となっています。
タイトルの「住吉」は摂津国のこと。現在の大阪・兵庫あたりを指します。住吉津(すみのえのつ)は古代から存在した港です。

「実(げ)に 住吉の松こそ めでたけれ
深緑 枝も栄えて 葉も繁る
仲もよいよい 相生の松に契らば」

歌詞の初めは、住吉の松がおめでたいことをうたっています。
相生(あいおい)とは夫婦が仲良く連れ添って長生きすることを意味し、おめでたい曲によく使われる言葉です。
由来となっているのは住吉にある「相生(あいおい)の松」。雄松(黒松)と雌松(赤松)の幹が自然に合着したもので、形は一本の根本から二本の松に分かれたように見えます。夫婦の契りの深さにたとえられ、縁結びや和合、長寿の象徴とされます。

「裏戸を開けて 月ととも寝の 気はざんざ 
 おもしろや 風は颯々(さっさ) 波は白々
 謡い奏でて 祝す寿」

仲のよい相生の松になぞらえて、男女の仲を唄います。語感の良い「ざんざ」は江戸時代頃から使われるようになった囃しことばです。曲全体を考えるとここではいくつかの意味がかかっていると解釈するのが良いのでしょう。
一つには「ざんざ」という音を表現しているということ。松の木の間を風が吹く時に音が鳴りますが、その松風の音のことを「ザンザ」と表現します。また、その後の歌詞にもある「颯々と」を略してザンザと表現することもあります。
二つめに、主人公の心の様子を表していると考えられます。
「月ととも寝(共寝)の」の男女の仲を表す歌詞に続く「気はざんざ」ですので、一人きりの月夜、今ここにいない相手に思いを馳せ、ときめく心を表しているではないでしょうか。松を揺らす風の音と心のざわめきが重なって、それを「おもしろや」=「趣がある、風流だ」と楽しんでいるのかもしれません。
場面は、風や波の風景に戻り、最後は‟寿”で締めます。

小唄 住吉

作詞:小野金次郎 / 作曲:中山小十郎
 
実(げ)に 住吉の松こそ めでたけれ
深緑 枝も栄えて 葉も繁る
仲もよいよい 相生の 松に契らば
裏戸を 開けて 
月と とも寝の 気はざんざ おもしろや 
風は颯々(さっさ) 波は白々
謡い奏でて 祝す寿

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