小唄徒然草 26

今回の配信で若かりし頃の春日とよ家元の小唄シリーズは、すべて古曲で作者不詳です。どうぞお聴きください。

一二、涙かくして(竹になりたやの替歌)(ニ上り)

 
涙かくして 送り出す 二階座敷で 
見ていたら  一と足ずつに 遠くなる
エエも 焦れったい 曲り角
ソレソレソレ そうじゃいな

解説

廓の朝帰りの情景をあしらったもので、江戸の吉原、京の島原などで、後朝(きぬぎぬ)(共寝(ともね)した男女が朝になって別れること。
その時刻)の別れ姿を思い出すようなやさしの、情のある小唄。

竹になりたやの替歌である
(参考 https://www.youtube.com/watch?v=MmLYywKEpaw

・さつまさ(二上り)

薩摩さ コリヤサ アアア
さつまと 急いで 押せば

汐がサ コリヤサ アアア
そこりて 艪がたたぬ 工

解説

湾内の島から鹿児島港の廓に通う、船頭衆の気持ちを唄ったもの
「そこり」は、干潮で水が浅なり、気は焦るが櫓がつかえねと言う意味
この唄は、芝居の下座として多く使われている例えば髪結新三や加賀鳶
唄なしでは、弁天小僧のゆすりの場面など

十三、逢うて別れて(本調子)

 
逢うて別れて 別れて逢うて
千切れ 千切れの 雲見れば
恋し 床しの 一と声は
わたしゃ 松虫 主はまた
空吹く 風の 呑気さよ
男心はむごらしい 憎うなるほど
にくいぞえ

解説

自分を松虫(待つ虫)にたとえ、男を秋風にたとえて男心のつれなさ、呑気さを恨みながら、離れられない恋しさを唄った小唄。

十四、色気ないとて(本調子)

 
色気ないとて 苦にせまいもの
賤が伏家に 月も射す
見やれ茨にも 花が咲く
田植戻りに 袖つま 引かれ
今宵 逢おうと 目づかいに
招ぐ合図の 小室節
ススキに残る露の玉 かしくと
読んだが 無理かいな

解説

都の人は、私たちの事を田舎娘と笑うけど、住めば都で、身分の低いいやしい者の住むそまつな家にも月は差し込んできます。茨にも初夏には、いい匂いのする花が咲き、秋には実もできる。
田植え装束(紺色の単衣の着物に赤い帯、白い手ぬぐい)で田植えから帰ってくる女たちを、逢引合図の「小諸節」で誘っている男たちの風景をよんだ小唄。