小唄徒然草3帖

小唄 川風

 
川風につい誘われて涼み船 文句もいつか口舌して
粋な簾の風の音に 漏れて聞こゆる忍び駒
意気な世界に照る月の 中を流るる隅田川

小唄 祭

 
思うさま 降って上った 夕影に
灯し初めたる提灯も
何かにつけて町内の
そぞろ浮き立つ祭り前
「まっぴらご免ねぇ 祭りにゃ
 神輿を担いで廻るんだが
 お前んとこの軒が
 じゃまっくせいから
 とっぱちゃぁ くんめぇか」

小唄 お祭佐七

 
町々へ 音にきこえし 江戸育ち
その噂さえ 橘屋
掛けた羽織の情けさえ
袖にかえした仇口に
喧嘩かむりの一本気
縁の糸もぷっつりと
切れて読みなす文のあや
辻行燈に照らす真実

小唄 夏景色

 
紫の あやめの影もいつしかに
過ぎて浴衣の夏景色
上覧(しょうらん)まつり江戸祭
花笠あみだに麻だすき
腰にゃ揃いの火の用心
「アーラ オンヤレナー」
「オッと 花車(だし)ァ土佐坊少将だ」
粋な頭だ越後屋の
仕立ておろしの昇り鯉

小唄 御祭礼(日吉さん)

小唄 日吉さん~小唄 伽羅の香り メドレー
 
 

日吉さん御祭礼

所せましと氏子中
中に勇みの伊達姿
ちょっと御酒処の一杯に
浮き立つ色の染だすき
猿酉が警固に手古舞はなやかに
海ほうずきゃほうずき
ええ山王様お祭番付
ええこれはお子供衆のお手遊び
八つ八通り十三通りに変る
文福茶釜 蛇の目の傘 角兵衛
太神楽 馬鹿囃子
ちぇちぇんちぇんちきちんち
すすきの山車でも威勢よく
揃いの半纏 対の鉢巻
頭が音頭で オンヤリョウ

 

小唄『酒と女』

酒と女は気の薬サ
とかく浮世は色と酒
ササちょっぴりつまんだ悪縁因縁
なまいだなまいだなまいだ
地獄極楽へずっとゆくのも二人連れ
わしが欲目じゃなけれども
お前のような美しい
おなごと地獄へゆくならば
閻魔さんでも地蔵さんでも
まだまだまだまだまだ鬼ころし

 

小唄 伽羅の香り

伽羅の香りとあの君様は
幾夜とめても
わしゃとめあかぬ
寝ても覚めても忘られぬ