小唄徒然草 30 芝洲好みの小唄 パート1
小唄徒然草も30回を数えるようになりました。
今回は数ある小唄の中から私好みの小唄14曲を、4回に分けてお届けします。
1、お梶(藤十郎の恋)
土屋 健 詞 黒崎 茗斗 初代 本木 寿以 曲
本調子
和事なら 天下無双の藤十郎様の 仕かけた恋は うらはらの
罪な 芝居の筋書と 知るによしない 女気の
心の舵(梶)のとりちがい ふっと吹き消 絹行燈の
消えてしじまの通り魔か 鴨の河原の川底へ
泣いて沈んだ めんない千鳥
解釈と鑑賞
菊池寛「藤十郎の恋」から題材をとった小唄
偽りの恋を仕掛けられて、心の貞操をもてあそばれた「お梶」の心情を唄った小唄
※「かもがわ」多くの京都庶民は、慣習的に最大の支流である高野川との合流点より上流を「賀茂川」、下流を「鴨川」と記載している。
例えば下流の先斗町の名物「鴨川をどり」などは「鴨」の字が使われる。従って、菊池寛の「藤十郎の恋」の舞台は、芝居小屋がある下流の物語なので「鴨」の字を使用した。
2、お園(艶容女舞衣)
亀山静枝 詞 春日とよ 曲
本調子
いつしか更けて 木枯しの 軒うつ音も
身にせまる 置行燈の 影淡き
帳場格子に しょんぼりと
鬢のほつれも 涙にしめる
鴛鴦(おし)の 片羽の かた思い
今頃は半七さん 何処にどうして 霜の夜を
かすめてひびく 鉦(かね)の 音は
ええ気にかゝる 寒念佛(かんねんぶつ)
解釈と鑑賞
艶姿女舞衣(あですがたおんなまいぎぬ)の酒屋の場を唄った小唄、春日とよ家元は、この歌詞がすっかり気に入って、義太夫節を取り入れ歌舞伎舞踊小唄として作曲した。
※ 帳場格子 江戸時代に帳付けするところで周囲がが格子になっていた(添付画像参照)
※ 鴛鴦(おし)の 片羽の かた思い~仲の良いと言われる鴛鴦のツガイがはなれて一羽淋しくの意味
《参考》 義太夫のお園 小唄に取り入れた個所
鴛鴦(おし)の 片羽の かた思い~後の合いの手
https://youtu.be/Av9miIovWGY?t=715
今頃は~https://youtu.be/Av9miIovWGY?t=194
3、ほたる茶屋(杉浦翠女 詞.曲)
本調子
オランダ坂の 夜の雨 様と もやいの 傘のうち
ひとめ忍んで 逢う瀬の茶屋で あなたまかせの 重ねちょこ
傘を忘れた ほたるの茶屋に 空がくもれば いよ思い出す
酒にいわせる 我儘も うれしい首尾の
夢の浮き橋
解釈と鑑賞
雨の長崎オランダ坂を舞台に男女の逢瀬を唄っています。