小唄徒然草6帖

夏の雨

初代永井ひろ作詞・作曲

夏の雨 凌ぎし軒の白壁に
憎や噂をまざまざと
相合傘に書いた文字
見ては綻ぶ片えくぼ。

土手に飛交う(三下り)

土手に飛交う 蛍の虫は 
追われ追われて 
ちらり ちらちら
そっと押えた団扇の手管 
ええしょんがえ

二人一緒

二人一緒に暮らすなら
茄子と胡瓜のつき加減
涼しく箸をとり膳や
浮世をさらりと 茶づけにしょ

廻り灯篭

(本調子)
廻り灯篭ゆらゆらと
浪がゆがんで船が来る
陸にや人力花電車
犬も負けずに走るなら
姐さんお座敷おいそぎか
裾もほらほら川風に
ぽんと花火の散る浪が
又めぐり来るくるくると
ほんに浮世はまわりもち

河太郎

芒かついだ河太郎
かぼちゃ畑をふらふらと
酒か団子かいい機嫌
用水堀も薄どろを
誘う雨気の小夜更けて
月の遠音の村囃子

山中しぐれ

湯煙のかじか鳴く道山中道は
夢もはるかな思い出小道
こおろぎ橋のらんかんは
今も変わらぬ湯の香り
ハア一夜逢えても二夜と逢えぬ
旅のお方は罪深や
いで湯の町の唄聞けば
誰かが泣いているような

露は尾花

露は尾花と寝たという
尾花は露と 寝ぬという、
あれ寝たという 寝ぬという
尾花が穂に 出てあらわれた

月は清水と寝たという清水は月と
寝ぬという あれ寝たという
寝ぬという
清水は田毎にあらわれた

満月や

初代平岡吟舟詩・曲

満月や 葉越し柳の涼風に
吹かれて歩む二人連れ
磯浜近く打ち寄する
女波男波の音ならで

沖の鴎はヨー 大漁知らす
沖に櫓拍子浜の唄